ロックバンドの時間だぞ〜ある日の下北沢、ハルカミライ〜
その日の目当ては別のバンドだった。
そのバンドのライブがおわると、少し緊張がとけてお酒をぐびぐび飲んだ。
帰りも雨かなあ、嫌だななんて考えながらボーっと突っ立っていた。
すると現れた本日のトリ、ハルカミライの登場。
そういえば初めて見るな、って余裕に構えていた。
「ロックバンドの時間だぞー!!!」
その声を聞いたその瞬間、つま先からビリビリッとなにかが上にあがってくる感覚。
なんだこれ。なんだ、これ。
棒立ちだった足がいつの間にか動いて前に進んでいた。両の目がステージに釘付けになった。
いっきまーす!!という叫びで、“君にしか”のサビをそこにいた全員が大合唱。拳をあげて、
身体がカッと熱くなった。
たぶんこれはお酒のせいじゃなく、今目の前でライブしてるこのひとたちのせいだ。
「今日俺たちがなにしに来たかわかるか?!」
「俺たちは金儲けをしに来た!宣伝をしに来た!…ぜんっぶ嘘です!名曲を歌いに来た!」
今までいろんなバンドの、いろんなライブを見た。その度様々な感情を抱いた。
でもこれは。このひとたちのライブは。
うまく文字に起こせない。
大砲を身体の中心にドーンッてくらったような。
ただ、ただ胸のドキドキが止まらない。
本当に凄いものを見たときは、言葉になんて出来ないってこういうことなんだと思った。
<君には全てをあげるよ >
<だから君の全てをくれよ>
なんて歌詞の“ラブソング”という名の本物のラブソング、どうしようもなく愛しいという感情を抱かずにはいられない。
「見逃すなよー!!」
なんて言っていたけど、見逃すどころか目が離せない。
外の雨のことも、生活のことも、一旦置いておくどころか忘れていた。
ただ、目の前の彼らのライブしか見えていなかった。
紛れも無い「ロックバンド」のライブ。
その目撃者になれた。
また忘れられない日が増えた。
帰りの下北駅でも、ドキドキは鳴り止まなかった。
イヤフォンを耳にあてて、数十分前に思わず涙が出てきてしまった曲を流す。
<ねえサテライト見つけてほしい 私のことを分かってほしい>
口ずさみながら帰り道を歩く。
そういえば、いつの間にか雨はあがっていた。